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恩返し

つかの間の「秋」は予想通りあっという間に通り過ぎ、またまた暑い日ざしが戻ってきてしまった。それと同時に戻ってきたのが、寒い期間中凍えていたらしい、蚊の集団。
もうすでに10箇所以上刺されてしまった・・・。
また、虫との闘いの日々が始まったようだ。

とこで、「社内通訳者の心構え」という題名で、日本語学科の4年生の皆さんにお話をしてきた。

実は、7年前、タイに来たばかりの頃に大学の日本語学科には大変お世話になった。
しばらくの間、日本語教師として、仕事をさせてもらっていたのだ。

週に一度外に出ることで、育児と仕事の両立を少しずつスタートさせることができ、私も周囲も、次第に心構えができた。あの日本語教師の仕事は、あの頃の私にとって、育児中心の生活から社会復帰するために必要な、大切な一つのステップだった。

その機会を与えてくれた日本語学科に、多少の恩返しができるのであれば、嬉しいことである。

そう思って、4年間の日系企業勤めで学んだいろいろなことの中から、通訳者に大切なことについてお話してきた。

1つ目 分からないことは「分かりません」ということ。

簡単なことのようで、これは非常に難しい。

まず、「分かりません」と言うこと自体、恥ずかしいことである。さらに、周囲の目は通訳者に注がれている。「早く訳してよ」という無言のプレッシャーを感じる中で、「分かりません」と発言しなければならないのだ。これは非常に厳しい。
でも、分からないままに間違って訳したら、その方がもっともっと恥ずかしいし、大きな問題につながります。 というと、皆さん真剣に頷いていた。

そして、実社会の厳しさも、少しだけ伝授。

「皆さんはまだ新人です。4年間大学で勉強しただけで、上手に通訳ができる訳がありません。
だから、分かりませんと言うことは恥ずかしいことではありません。安心して分かりませんと言ってください。
でも、周りは優しい人ばかりではありませんよ。特に、タイ人の先輩達は、いろいろ言います。
通訳のくせに、何で訳せないの?と文句を言う人もいます」

みなさん、チョコッとざわざわ。
そうなのだ。新人通訳者の初任給は15000バーツを超えている。一方、その他の新卒は8000バーツ程度からスタートする。最初から2倍近くの差がついているのだ。
後から入ってきた新人が、給料を倍近くもらっているのに、「分かりません」とばかり言う。自分の方が上司の日本語を理解できてしまう。そんな状況を快く思わない人がいてもおかしくない。

そして、そういう不満な気持ちは、心にしまわず、ストレートに表現してしまう人が、多いのだ。

「高い給料もらってるくせに全然仕事できないのね」
「通訳なんでしょ?ちゃんと訳してよ」
「本当に正確に訳しているの?今の日本語訳をタイ語にしてごらん」

そういう厳しい言葉を投げかけられて、社内電話で泣きながら訴えてくる後輩に何度慰めの言葉をかけただろうか。

みんなそうやって、泣きながら成長していくのだ。泣きながらも、あきらめずに努力する人が、伸びるのだ。汗と涙の数だけ、成長するのだ。

なにやら体育会系のノリだけれど、真実。

1年も頑張れば、もらっている給料の分だけ働けるようになれる。
どうぞ彼女達が、周囲に優しく見守られ、立派な通訳者に成長しますように。

さ、後輩の皆さんにも頑張っていただくとして、私自身も、今月さらに大きな大きな乗り越えるべき壁が迫っている。
この壁の大きさは前代未聞。かなり厳しいことになるだろう。でも今回は強力な仲間がいる。皆で懸命に取り組んで、いい仕事をしようじゃないか。

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コメント

てんもさんのような先輩がいたら心強いだろうなぁ。 通訳中に分かりませんを言うのは本当に難しいですよね。。。 英語・タイ語でののプレゼン最中の質問を日本人に通訳するのに泣いてしまった経験があります(泣) でもこうやって強くなるんですよね

チャレンジの人、てんもさん、ガンバレ!

ラピさん
そうそう。流した涙の数だけ強くなる、と思います。

きよさん
はい。頑張ります(笑)
きよさんの言っている、「プロ」になれるように・・・。
ね(*^_^*)。

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