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月光市場今昔物語

近所に、「月明かりの市場」というロマンチックな名前の屋台街がある。
パッタイ・ホイトートなどの鉄板焼、
カオマンガイなどのご飯物、
ソムタム・ガイヤーン、
クィッティアオ・カノムジーンなどの麺類、
アハーンタームサン・その場にある材料でお好みの物を作ってくれるご飯屋さん
ジュース屋さん、ナムトーフー(豆乳スープ)屋さん、かき氷屋さん・・・

それらの、どれもが奇跡的においしい屋台街だった・・・

そう。過去形なのだ。

8年前、私がこの地にやってきた頃がこの市場の最盛期だった。
どのお店のご飯も、その頃の私にとっては、タイで一番おいしいご飯達だった。
私にとってだけではなく、タイの人にとってもおいしいらしく、朝も昼も夜も、
店は大勢の人で賑わっていた。

その後、立ち退きのような形で、屋台街全体が200Mほど移動した。その頃からだろうか・・・。
あれだけ賑わっていた屋台街に、人の姿がまばらになっていったのは。

味が落ちた訳ではない。しかし、客足が少しずつ遠のき、屋台街全体から活気が消えていった。
そして、「衰退」の影が忍び寄ってくると、各屋台の人の個々の努力では対抗できない、大きなうねりとなり、屋台街を飲み込んでしまった。

売り上げがかつての半分に落ち込み、これでは生活できない、と旅芸人の様に、各地のお祭りを追いかけて屋台を出展する形式に転向した屋台もあった。

「あそこに行けば、なんでもあるよ」
と言われていたかつての面影は、もうどこにもない。

屋台の人たちは、自分達なりに現状分析をしていた。
200M移動したことにより、立地がメインロードから外れてしまったのでお客さんが入ってきづらくなった。
周囲に屋台やレストランが増えたので、そっちにお客を取られてしまった。
今の若い子はダイエットを気にして、肉料理を食べない。

そして、昼に配達を始めるなど、どこも必死にかつてのあの「月明かりの市場」を取り戻そうと努力したが、もう、お店の数も半分以下に減り、寂しい雰囲気すら漂うようになってしまった。

ビジネスの世界では、全てのビジネスには創生期、成長期、停滞期、衰退期、の各段階があり、うまく成長期のビジネスに参入すればさほど努力しなくても成功するものだ、ということが言われることがあるが、全てのビジネスに寿命があるように、市場、屋台街にも寿命があるのだろうか。

市場全体を包む暗雲のような重苦しい雰囲気は、売り上げの増大のための各お店の様々な取り組みを飲み込んで、成長し続ける。

おいしいご飯が食べられなくなることが残念で、どうにか市場の復活ができないものか、と願っているのだけれど、私の願いは、果たして、かなうのだろうか・・・。

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コメント

なぜか、読んでいて鳥肌がたち、そして涙が出そうになっちゃいました。
たかが200M、されど200M(涙)。

今のタイって、良きものが滅びて、悪きものがのさばってる感じ。
その屋台、ぜひぜひ復活して欲しいですね。

不思議ですね。
何がきっかけで落ち込むのか、何がきっかけでよくなるのか・・・
今、日本ではカップ酒がブームだとニュースでやってたけどなんでそういう需要が出てきたんだろう?これにも何かのきっかけがあったのかなー。それともきっかけなんかなくて、そういう大きな流れみたいなものは実は最初から決まってるものなのかな。

不思議なことにタイって美味しい店が移動してダメになっていくのをよく見る気がします。
私が大好きだった店も場所を移動して店を広くしたら、
衰退していった・・・。

kaoriさん
本当においしいご飯を出してくれるだけに、残念です。

COCOさん
本当です!!ぜひぜひ復活してほしいなぁ。

ジロチョーさん
大きな流れって、結局は何なんでしょうね。影の仕掛け人みたいな人がたまにいるけれど、そういう人と関係ないところで発生する流れもありますよね。

noinaちゃん
危険なんですよね、店舗拡張のための移転・・・。

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