制服
以前会社勤めをしていた時の制服は、紺色のベストとスカートに白いブラウスだった。
どこぞの学生さんのような可愛い制服は、他の会社からも羨望の目で見られていた。
タイの会社の制服というのは、基本的に制服そのものを支給されるのではなく、生地を支給される。
そして、着たい服を自分でデザインして、仕立て屋さんに持っていく。
だから、同じ色で同じ柄だけれど、デザインは一人一人違う服を着ることになる。
制服は毎日身に付けるものだし、タイの場合、制服姿のまま出勤するので、(私服で出社して職場で制服に着替えるなんてことはしない)会社帰りにどこかで食事、というときも制服のまま。
だから、制服のデザインは自分のこだわりを主張するチャンスでもあり、おしゃれのセンスを披露するチャンスでもあるのだ。当然、皆真剣。生地が支給される少し前になると、皆デザインを考えるのに忙しくなる。もちろん、仕事なんて二の次である。
私は生まれてこの方服のデザインなんてしたことがなかったので、早々にあきらめ、いつも友人任せだった。受付のオーイは、そういうのが大好きなおしゃれ少女だったので、彼女に頼んでいた。
面白かったのが、彼女がデザインする際に参考にする資料。
大人向けの雑誌はもちろんだけれど、スーパーのチラシなどで、子供服のデザインまで研究していた。
そして、子供用のスカートのすそ部分に面白いデザインがあると、それをそのまま制服のデザインに応用するのである。
オーイは社員の中でも若手で、派手なデザインを好んでいた。
そのオーイに「デザインお願いねー」と任せてしまった私。
目を輝かせて「任せて。かっこいいの作ってあげるから」と張り切っているオーイ。
それを見て心配したのは総務マネージャーのアンだった。
「あのね、オーイ。てんもは社長秘書だから。公式の場に出たりすることもあるんだから、あんたが着ているみたいな派手なデザインはやめときなさいよ。少しシックなのにしてよ」
「わーかってるって」
ハラハラしながら見守るアンに、お客さんへの対応そっちのけでデザインに没頭するオーイ。そして、そんな周囲のやりとりよりも、いろいろな部門からまわってくる書類の翻訳に忙しかった私。
今となっては、すごく懐かしい光景である。
結局、アンの心配をよそに、オーイがデザインしてくれた服はすごくきれいで、評判が良かった。
「綺麗なデザインだね」
と私の制服が褒められるたびに、
「デザイナーがいいからね」
と自慢そうに言うオーイ。
私が退職する際には、数着を記念に取っておき、後は皆友達に残してきた。
たまに仕事などで旧職場に顔を出すと、あの頃の私が来ていた服を着ている子がいる。
それを見るたびに、学生生活のように楽しかった職場での生活を思い出す。
フルーツ大好きなクンとアンはまだ頑張っているけれど、オーイは私がやめた半年後にこの職場を去った。
今はそれぞれに別々の道を歩いているけれど、私にとっては、いつまでも大切な友達。
今度また、オーイをさそって食事でもしよう。
コメント
嫁を日本に連れて来て、法事の前に実家のおかんが
「服買ってあげるわ、あなた何号?」
「服はぜんぶオーダーでつくってます」
呆然? おかんはタイをジャングルだと思っていたようで・・・
うちのおかんのタイに関する知識は最初このレベルでした(笑
さすがにいまは違いますがね〜
しかしちょっと見栄を張ったのか? タイで嫁の持っていた服はBIC−Cやロータスで買った服ばかりだったような・・・(笑
投稿者: ヒロ | 2006年01月13日 13:20
タイのホテルで働いてたときの私の制服はアロハに白い長ズボンでした。
私も前任者はタイの衣装だったので、
がっかりと共に私に似合うと思ったものです。。。
投稿者: noina | 2006年01月13日 14:30
うちの会社では仕立て屋さんが事務所に来て一人一人サイズを測ってから作って持って来ます。だからデザインは皆同じです。毎年年末に新しい制服を支給するのに昨年は業績が悪いと社長が支給を止めたんです。女性社員からの物凄いブーィングが私に・・・・。毎日着てアイロンを掛けているのでテカテカに光っている人も居て可哀相。今年はソンクラン頃に支給予定。
投稿者: うえの | 2006年01月13日 14:37
ヒロさん
服は全部オーダーメードと聞いたら、「ま、どこのお嬢様?」と思われたかもしれませんね。(*^_^*)
でも、ロータスじゃオーダーで作れないかなぁ・・・(笑)
可愛い奥様ですね。
のないあちゃん
アロハに白い長ズボンも、さっそうとして、格好良さそう。のいなあちゃんに似合いそうだよ。会ったことないけど、イメージ的に(^。^)
うえのさん
う〜ん・・・ 女性社員の気持ちも、社長さんの気持ちもわかるなぁ。
ソンクランが楽しみですね。
投稿者: てんも | 2006年01月13日 16:12
私の元職場も、最初にみんなでデザインを選んでから仕立て屋さん
がきて、一人一人サイズをはかってくれました。見本のデザイン本は、上司が日本からもちこんだのでしょうかと思われる日本の制服デザイン本でしたよ。だから、無難なデザインのものがきれました。仕立て屋さんが私のウェストをはかるとき、おもいっきりメジャーをきつきつに巻くので、私は、「いつデブになるかわからないから、もっとルアムルアム(ゆったり)にして」といって笑われた。あんな、きつきつランチ食べたらくるしーよー。タイの人は少しずつ食べるから大丈夫だったのかな?わたしは、どかっと食べるタイプだからだめでした。
投稿者: ポォ | 2006年01月13日 17:00
いいデザイナーさんがいてよかったですね。私の元職場でも何年かに1度制服の生地が変わり、そのたびに皆業務そっちのけで雑誌を片手にあっちの仕立て屋、こっちの仕立て屋に出向いていました。今思うととても懐かしいな。
投稿者: ラピ | 2006年01月13日 23:50
ぽぉさん
あ、ポォさんのところもデザイン決まっていたの?
ウェストきつきつはどこも同じだね〜。
タイの人も、苦しがっていたよ(笑)
ラピさん
あ、ラピさんのところはうちと一緒だ(ちょっと嬉しい)
業務そっちのけになるところも一緒だ(爆)
投稿者: てんも | 2006年01月14日 00:05
ほんと制服ってそのときの思い出がいっぱいつまってますよね。私は以前タイのホテルで働いていたことがあるんだけど、ホテルにいるときは民族衣装。うれしかったなー!もちろんオーダーメードで作ってたよ。今でもお気に入りは記念にとってる。当時同僚たちから「見た目はタイ人なのに歩くと日本人ね」と笑われていた。優雅じゃないんだよね。シャキシャキ歩いちゃうんだどうしても(笑)
投稿者: ベンジャロン | 2006年01月14日 01:01
ベンジャロンさん
オーダーメードの民族衣装とは、贅沢ですね〜!!
歩き方でばれるのって、分かる気がする(笑)
タイの女性は、ダラダラ歩くってわけじゃないけれど、身のこなしを優雅に、するするっと動くんだよね。
投稿者: てんも | 2006年01月14日 07:51