2009年11月24日(火)
MC [スコータイ大学]
22時まで勉強する、という驚くべきスケジュールが記載されていた時間割には、「MC」という表示があった。
このMCは、スコータイ大学の研修合宿とは切っても切り離せない。なくてはならない大切なものだった。
簡単に言えば、1日中課題に取り組んでいる学生をリラックスさせるための時間。朝と夕方の1日2回各30分。毎回校歌の練習をして、その後にゲームをする。ゲームは「命令ゲーム」とか「ボール投げ」とか、全員で参加できて、簡単で、少し身体を動かすものだった。MCは、合宿参加者全員に参加が義務づけられていた。
合宿初日の最初の時間に、このMCについて説明を受けた。
スコータイ大学の校歌は全部で16あり、歌詞が書かれた小冊子が配布された。
「MCではこの16の歌を歌って、最後の日までに歌詞を覚えてもらいます」
学生の間に、白けた空気が広がる。
MC担当の先生が言う。
「・・・今、皆さん、歌なんで嫌だね、って思ったでしょ?」
学生全員が爆笑。
MCを担当するのは各科目の先生達。初日にMCを担当したのはまだ若い新人先生だったけれど、間の取り方が絶妙でコメディアンだった。その先生が一言口を開く度に、学生達は笑い転げた。
私もお腹を抱えて笑いながら、緊張でカチコチに固まっていた心と体が少しずつ柔らかくなっていくような感覚を覚えた。
その後、課題の提出が間に合いそうになかったり、もう少し寝ていたかったり、いろんな場面でMCをサボってしまいたくなったけれど、結局は最後まで欠かさずに出席した。大声で歌ったり、ゲームで身体を動かすうちに、脳みそがホッとするのが分かった。
「課題だけに取り組んではいけません。必ずMCに参加して、リラックスする時間を持って下さい」
という先生の説明には説得力があった。
MCで16のスコータイ大学の歌を少しずつ歌ううちに、ちょっとずつ愛校心が沸いてきた。
そして、MCの中で先生達が「スコータイ大学用語」を教えてくれた。
例えば、スコータイ大学では、合宿参加者のことを「学生」とは呼ばない。
もうすぐ学士になる人、学士見込みという意味を込めて「プーワー・バンディット」と呼ぶ。
合宿参加が必須事項になっている科目に申込めるのは、一番最後の学期。一学期に最大で3科目まで履修できるので、合宿に参加する人は、多い人でも合宿以外にあと2科目残っているだけ。ルームメイトや私のように合宿が最後の科目、という人も珍しくなかった。卒業に手が届きそうな人ばかりが参加しているので、「プーワー・バンディット」なのだ。
そんな合い言葉のような言葉を教わり、毎日使っているうちに、大学との絆が一層強まるような気持ちになった。
ちなみに、スコータイ大学のスクールカラーは「キアオ・トーン(グリーン&ゴールド)」。だから合宿の手引きや校歌等の冊子は全て緑色が基調となっていた。
MCが何の省略だったか、先生に説明してもらったけど忘れてしまった。
ある日のMCでは、司会の先生の発案で、合宿に参加していたお坊さんのお話を聞く機会があった。
そのお坊さんはバンコク都内のあるお寺の住職さんで、スコータイ大学でマネジメントを学んでいるのだった。お坊さんのお話は題して「スコータイ大学生に向けた説法」。
お坊さんの中には、一般市民向けに分かりやすく仏様の教えを広めるために、ものすごく話のうまい人がいる。話が面白くて笑いながら聞いていても、大事なことが伝わるのだ。
このお坊さんは、400人の人数を前に話しをするのは初めての経験ということで、聞いて笑える説法とまではいかなかったけれど、それでも話をする姿は堂々としていて、聞いている学生にとっても、貴重な機会だった。
Posted by てんも at 00時01分