2007年03月10日(土)
正確な情報はどこにあるか。 [タイで仕事]
タイ語の法律の翻訳を依頼され、原稿を眺めているうちに妙なことに気づいた。法律には法律の型のようなものがあるのだが、その原稿はその型に従っていない。しかも、タイプミスとしか思えない変なスペルまで出てきた。
「これは絶対におかしい」
クライアントはタイのある官庁のウェブサイトで公開されているタイ語の法律をダウンロードしていた。その原稿には明らかに誤りが含まれているので、法律を扱う専門機関のサイトで公開されている原稿を翻訳することを提案したのだが、クライアントは「官庁のウェブサイトで公開されている法律文に誤りがある」ことが信じられず、私の説明に半信半疑のようだった。
クライアントの気持ちも分かる。政府機関ウェブサイトで公開している情報が誤っているはずがない。しかも法律文である。
これは大いに問題ありだな、と思い、その政府機関に勤務している友人に尋ねてみた。
政府高官の側で仕事をしている彼はあっさりと言った。
「あー、それは多分、ウェブサイト用に法律文を打ち直して、その時にミスしたんじゃないかな。困ったもんだね。ははは。」
法律文を打ち直してはいけません。
しかも笑い事で済ませてはいけません。
多くのタイ人には「人間のやることだもの。ミスだってあるさ」という共通の認識があるような気がする。そして部下や相手のミスを許すことが「大人」の美徳であり、寛大な人間の証であると考えられているような気がする。
ミスや不良を限りなくゼロに近づけるためにチェック機能を整備し、継続して努力する日本の改善運動とは、「ミス」に対する考え方が根本的に異なっているのだ。
それではタイの全てがいい加減なのか、といえば決してそうではなく、「ミスは許されない」という認識で仕事をしている場所もある。前出の法律専門機関がそうである。
肝心なのは、「だからタイはいい加減で・・・」と決め付けてしまうことではなく、「どこに正確な情報が存在するのか」を見極めることだと思う。それは非常に難しいことではあるのだけれど。
Posted by てんも at 00時10分