2006年08月22日(火)
僕は卒業したくありません [タイで仕事]
大学の日本語学科の特別授業にお招きいただき、通訳や翻訳の仕事について語る、ということを年に数度している。
本当は一つ授業を受け持たないか、とお誘いいただいているのだが、授業というのは、小学生でも大学生でも同じ。先生は授業に入る前に予習、資料集めなど様々な準備をして、授業後も小テストや宿題の採点などをする。本当に尊い職業だと思う。だからこそ、中途半端にお引き受けできない。今の自分では実り多いコースにすることは難しいと思い、年に数度のコースのみお引き受けしている。
特別授業の場合には「内容はお任せしまーす」と明るく言われる。日本語を勉強中の学生さんにとって生身の日本人と日本語で触れ合う機会そのものが貴重かもしれないな、と思うので、自分が通訳として日系企業に勤務していた4年間の経験の中から楽しかったことや大変だったことを語ったり、ミニゲームをしたりして、あっと言う間に2時間が過ぎた。前回までは2時間は長すぎる・・・と汗をかいていたのに、ようやく少し慣れてきたのだろうか。
一人の男子学生が言った。日本語学科の9割は女の子だが、数名の男の子もいるのだ。
「僕にはなりたい職業がありますが、それには英語も必要です。僕は英語が苦手なので、その職業は無理です。だからやりたくないけれど、通訳にならなければなりません。」
日本語学科で学ぶ学生さんは全員何らかの形で語学の能力を生かす職業を希望していると思っていたので、彼のような学生もいるというのは全く新しい発見だった。
「通訳はやりたくありませんが、給料は高いので、我慢できる・・・かもしれません。」
「就職活動まであと半年以上もあるんだから今から英語の勉強してなりたい職業目指してみたら?」
と言うと、「ああそうですねぇ」とうなずいていた。
続いて質問。
「会社で働く時には外見を見られますか?」
髪はフワフワのパーマで茶色い。おしゃれな学生さんである。
「それはもちろんです。会社で働くのであれば、外見というのもとても大切ですよ」
自分がいじわるばあさんにでもなった気持ちで言うと、男子学生は頭を抱えた。
「あぁ、僕は卒業したくありません・・・」
・・・かわいいなぁ。
通訳、旅行ガイド、フライトアテンダント、彼らの夢は様々。キラキラした目で日本語を勉強している彼らは、社会に出て会社という枠の中で自分の能力を発揮してイキイキと働くことを知るだろうか。それとも、別の方法で自分を表現する方法を見つけるだろうか。どちらにしても磨けば光り輝く原石たちが良い職場、良い先輩と出会って自分なりの道を歩んでいけることを願った。
Posted by てんも at 10時50分