2007年12月13日(木)
ハリーポッターのタイ語訳 [タイで生活]
先週タイではハリーポッター最終巻のタイ語訳が発売された。
というわけで、私がクロワッサンを買った隣でだんなさんはハリーポッターのタイ語版を買っていた。
タイ語版最終回の訳者まえがきに、面白いことが書いてあった。最終巻を担当した翻訳者さんが、同じく自分が担当した第6巻に誤りがあったと謝罪しているのだ。
最終巻で重要な意味を持ってくる、指輪に刻まれているある一族の姓を、第6巻で翻訳しなかったという。
指輪に刻まれていたというその一族の姓は、それまで物語に1度も登場せず、しかも第6巻の中でもたった1度しか出てこなかったらしい。そこで訳者は悩みに悩んだ。しかし、いろいろな人に意見を聞いても「特別な意味を表す単語ではなく、一族の姓である」ということしか分からなかった。
そして訳者は、説明もなく突然ただ1度だけ出てくるこの姓を、タイ語訳では省略する決断をした。
ところが最終第7巻にて、6巻で省略したこの言葉が実は非常に大きな意味を持つことが判明した。そこで訳者は7巻のまえがきで謝罪の言葉とともに、この言葉を6巻222ページ下から4行目に追加するようにとお願いしている。
シリーズ物の翻訳を、終着点が見えぬまま訳していく難しさを表している出来事だと思った。
外国の物語は、なじみのない植物や食物の名前や生活習慣など、説明なしでそのまま訳すと分かりづらいところがある。かといって、説明調になりすぎては物語のリズムが失われる。そこで翻訳者はいかに自然な訳語で、内容を正確に読者に伝えるか、というところで言葉と格闘することになる。そこが翻訳の難しいところでもあり、面白いところでもある。
この訳者さんは原作を読み込んで真剣に翻訳に取り組んだのだと思う。だから、最終巻を翻訳した際に6巻での翻訳ミスに気づいた。1語1句きちんと訳していなければ気づかなかったかもしれないミスに気づき、謝罪した。
きっとこの訳者さんは、これからも良い仕事をすると思う。
Posted by てんも at 00時29分